あのころ・臨月の今
クリニックで動画をもらったことが一度だけある。
赤ちゃんの体重は今の半分。それでも人間らしい顔や表情、動きがよく分かった。
私はその動画を何度も、何度も観た。
観る度にニヤニヤして、かわいいなぁ、かわいいなぁと思っていた。
あの頃を振り返ると、まだまだ夢見心地だったなぁと思う。
ただただ、愛おしくて、可愛らしい塊を愛でるような気持ち。
まだあの頃は、赤ちゃんが遠くにいた。
今、その赤ちゃんの存在は、私にとってぐっと近いものになった気がする。
私はその動画をあまり観なくなった。
どこか、夢見心地から醒めたような、赤ちゃんの存在が「夢」ではなく「今」、そして「現実」になったから。……正解かは分からないけれど、そのように感じる。
腰痛、お腹の張り、子宮の痛み
赤ちゃんはここにいる!と、これでもかと体は知らせてくる。
スマホの中ではなく、お腹の中に。
そしてあの頃の赤ちゃんはもういなくて、今いるのは、体重が2倍以上に大きく成長してくれた命。
かわいい、かわいいとばかり言っていられないモードに入ったかと、感慨深い気持ちでもある。
もう少しで会えるね。
余裕がない、つらい、そんな産後の声は産前からいくらでも聞くけれど、
……願わくは産後の私が、赤ちゃんを、一所懸命に生まれてきてくれた赤ちゃんの命を、愛おしく感じていてほしい。
大切に大切に想いながら、優しく接することができていたら、いいな。