憧れの人
私は、ファンという感覚をあまり受け入れられない人だと思っていた。
相手はこちらに見向きもしないのに、一方的に想うなんて、そんなことしたくないっていう頑固な気持ち。
でも今朝、なぜだろう、ふと思い出した。
私の忘れられない、ファンの人。
相手は私を知らない。でも私は知っていて、好きで、憧れで。
普通に生きていたらもう二度と会えないかもしれない相手。
出会いは大学時代。
ある授業で彼を見たとき、心が動かされた。
直視できないほど綺麗な佇まい、惹き込まれて目が離せなかった。
名前も印象的だった。
名字も下の名前も綺麗で、風景を見るようで。
その綺麗な佇まいとは裏腹に、級友に好かれるお茶目で無邪気な内面。
サークル活動に打ち込んでいる姿も垣間見えた。
PCルームでたまたま居合わせたときは、何を話すでもないのに緊張したなぁ。
それでもあの頃、他に自分を刺激するものなんて山ほどあって、彼の存在は多くのガラクタに埋れていた。
自分自身の気持ちにベールがかかっていた。
大学卒業間近、やっぱり彼のことが忘れられないとその存在を追ったけれど、彼はもう大学にあまり寄り付いていないようだった。気付くのが遅かった、と思った。
他人にとってはただのクラスメートや後輩や先輩であっても、私にとってはただの人物以上の存在だから、うかつに近づけなかった。
たとえばTwitterもinstagramもfacebookも知っていたけれど、同じ大学の同じ学部という中途半端な距離感、下手したら向こうが私を知っている可能性があったから、結局フォローできなかった。
フォローされたいとは、思っていなかったから。
彼はどこ出身だったかな。新潟か長野だったかしら…。
今では会えるとしたら大学の学園祭くらいかもしれないけれど、他にも思い出の詰まった大学、距離もあってそう簡単には行けない。
死ぬまでに一度、どこかで見かけられたら。
元気でいてください。活躍してください。
幸せになってくださいと、思う。