向き合うことで向き合えるようになる
結婚してどれくらいの頃だろう。
夫とうまくいっていないように感じる時期があった。
まだいわゆる新婚で、周りからは「幸せね」と言われることも多かった。
でも私としては新生活にも慣れてきて、それでもまだ不安定で。
しかも結婚して1年くらいじゃ夫がどういう人かもよくわからない。
予想外のことを言われて傷ついて、傷ついたことも言えず一人でめそめそしていたなー。
うまくいっていない頃。
夫と向き合うことをやめてしまったことがあった。
顔を合わせない。
笑顔を見せない。
話をしない。
話を聴かない。
多分、向き合うことに疲れたんだと思う。向き合い方もよく知らなかったし、傷つきたくなかったし。
でも、そうしていたら、関係がもっと悪くなった。気がした。
無関心を装うと、本当に無関心になってしまう。
話を聴かないでいると、本当に話を聴かなくても生活できるようになってしまう。
そうすると、いざ「ちょっと話してみようかな」というときに、どうやって話していたか、わからなくなってしまう。
その結果、距離は広がり、溝は深まる。
あの頃、辛かったなぁ。
夫から距離を縮めようと近づいてくれることもあった。
でも私は何度か拒否した。
―今さら、何?
そういう思いがあったから。
あなたには私の気持ちはわからない。
そんな諦めに近い思いがあったから。
その後、どういうきっかけがあったか忘れてしまったけれど、向き合うタイミングがあった。
向き合って話してみて、ほんの少し、心のわだかまりが溶けた気がした。
この人は私のことを十分に理解しているとは思えないし、自分のしたことがどんなふうに私の気持ちを傷つけたのかわかっていないだろうけど、私がこの人を選んだんだし。この人は私のことを、選んでくれたんだし。
向き合い始めて、「向き合うこと」ができるようになってきた。ほんの少しずつ。
傷つき合ったって言い合ったほうがいいとか言われることもあるけど、そう簡単なことじゃない。言えないものは言えないし、簡単に傷つきたくなんかない。
だから本音の本音をぶつけることはまだめったにできないけれど、
今の気持ちを伝えたり、
真っ正面から話を聴いてみたり、
嬉しいときは嬉しいねって確認したり、
そういう小さなことを積み重ねて、いつか大事なことや重いことまで分かち合えるようになればいいと思う。
「向き合わない」ことの積み重ねは、知らない間に大きな隔たりを生むと思うから。気をつけようと思う。