不格好でいいから
子ども時代、ある日あるとき、ひらめいてしまった。
心の中は笑っていなくても、口元をニッと横に広ければ、笑ったように見えると。
心の中では反省していなくても、言葉で「ごめんなさい」と言えば、謝ったことになると。
先生が指示したことを、やったふりをして、あくまで「私はきちんとやりました」という顔をしたら、それでいいのだと。
それは悲しい学習だった。
虚しい発見だった。
…
今は、それが正しくないことだと思う。
心がともなっていないなら、虚しい、と思う。
心にもないお世辞が自分にも相手にも響かないように。
同じ金メダルでも、努力の結果ならみんなに喜んでもらえるが、不正の結果なら信頼が底ついてしまう。
不格好でいいから、まっすぐ生きるほうがいい。
それは、大人の私にとって難しいことだからこそ、きっと尊いと思う。