花の匂い
我が家は観葉植物派で、花を家で愛でる機会はほとんどない。
観葉植物にだって私は殆ど関心はなかったが、夫が独身の頃から観葉植物を好み、結婚後も家でせっせと世話をしているのを見るうちに、何となく植物好きになっていった。
花が好きな知人女性がいる。
その人は子どもと一緒に花を植えて育てたり、普段から庭の花々の手入れをしているようだ。
花が好きだなんて素敵だなと思うし、そのマメさに脱帽してしまう(私自身は枯らしてしまうイメージしか持てないから……)。
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そんな私に、花の匂いは突然やってきた。
夫が「これいいんじゃない?」と選んだ、お風呂の入浴剤。
花の蜜の香りが楽しめるという。
植物や森林の香りは分かるが、なぜ花の匂い?…と、買うときは内心全く期待していなかった。
最初に何気なく選んだそれは「れんげ」だったと思う。
期待もせず湯船に浸かった時の衝撃は忘れられない。
ぶわっ。
強烈な花の匂いが下から私を包み込む。まるで一瞬のうちにれんげ畑へタイムスリップしたようだった。
…これが、花の匂いか……。
身体を浴槽に沈ませ、大きく息を吸ってみれば、全身に花の匂いが行き渡る。
迷いのない花の"意志の強さ"のようなものを感じた。
入浴剤だから半分以上作り物かもしれないけれど、花ってすごい、と私の花への見方が変わった出来事だった。
それからはお風呂の時間を通して感じる花の匂いが楽しみになった。
あかしあ、薔薇、ふじ。
1つ1つ違って、みんないい。自然と笑みがこぼれるような優しい匂いを楽しんでいる。
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観葉植物と違って、花は短命だ。
家に生けたとしても、一緒に過ごせる時間は限られている。
そんな宿命にも負けず、どこでも蒔かれた大地で上を向いて伸び、ぴんと胸を張って咲いているのだから、私も見習わないとなーと思う。
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花の匂い。こんなタイトルの曲がある。
その歌詞を一部ここに書いておこう。
「花の匂いに導かれて
淡い木漏れ日に手を伸ばしたら
その温もりに
あなたが手を繋いでいてくれているような気がした
信じたい 信じたい
人の心にあるあたたかな奇跡を信じたい
信じたい 信じたい
誰の命もまた誰かを輝かすための光」
(Mr.Children 花の匂い より一部抜粋)